不調のReprap 3Dプリンター (PCアップグレードの際は設定ファイルのバックアップも忘れずに)

設定が保存されていなかった

通販サイトで購入した自分で組み立てるタイプの家庭用3Dプリンターを4~5年使っていましたが、去年のデスクトップPCのアップグレードをした時に3Dモデル処理アプリ (Slic3r) の設定の保存を忘れていて、アプリの設定が消えてしまいました。

アプリをダウンロードしにアプリのサイトを確認したところ、以前使っていたバージョン(1.2.9)のSlic3rよりも新しいバージョン(1.3.0)が公開されていた (といっても公開されたのは去年の5月で1年以上前ですがw) のでこれを機会に最新のバージョンを使う事にしました。 しかし、何故かプリンターの出力がスカスカになって、以前の様なプリントが出来なくなってしまいました😫😫


スカスカな印刷結果

海綿なプリー

👇はプリーを出力してみた時のものですが、海綿みたいになってしまったので途中でプリントを止めました。

Bad Print (Wheel)

本当なら次の様な感じになるはずだったのですが。。

3D Model (Wheel)

家庭用の3DプリンターだとFFF (Fused Filament Fabrication) という製造方式が一般的で、熱で溶かしたプラスチックを糸状に出しながら層状に上に上にと重ねて行く事で形を作ります。 上記のアプリ、Slic3rがSTL/OBJ/AMF/3MFの形式で保存された形(3Dモデル)をどうやって糸状に出力するかを計算してくれて、『G-Code』という3Dプリンターを制御する命令文を書きだしてくれます。 そして、そのG-Codeを3Dプリンターに読み込ませると処理した3Dモデルが印刷されます。

といっても、ぎっしりプラスチックを敷き詰めて造形する事はせず、内部をメッシュ状態にして材料の節約をするのが一般的です。

👇は上のプーリーがどの様に印刷されるかをslic3rで図化したもので、丁度、一番上の画像で3Dプリントを止めた頃の状態になります。赤い部分がメッシュの部分で、「Infill」と呼ばれます。

Sliced Layers (Wheel)

症状からするとメッシュ(Infill)の部分で十分なプラスチックの出力が出来ていない感じです。

3Dモデル処理ソフトのSlic3rは、プリンター特有の設定を除いては、今までほとんど、標準の設定で使っていたので、きっと新しいバージョンで設定が変更になって、それで不都合が出たのだと思われます。


3Dベンチー

因に👇は『3DBenchy』という3Dプリンターのベンチマークに良く使われる船の3Dモデルを途中まで出力したものですが、見事にスカスカに出力されています。

Bad Print (3DBenchy)

本当ならこんな感じに。。。

Sliced Layers (3DBenchy)

PCのアップグレード以降に起きた事のなのでPCのソフトの設定不良が原因の可能性が高いのですが、同時に他にも問題があると問題の見極めが難しくなるので、まずは基本的な設定の再確認として、供給電圧やら、センサーのカリブレーション、ステップモータードライバーの設定やらを再確認 (問題無)。

その後、Slic3r (v1.3.0)のプリント設定の

  • 「Speed」の項目の設定を少し減らしてみたり、
  • 「Advance」の項目の設定をautoやdefaultでなく、実際の数字を入れてみたり

手探りで試行錯誤したところ、完璧ではないものの、👇前と比べてマシな出力が出来る様になりました。

Improved Print (3DBenchy)

結果と結論

結果からすると簡単な事が原因だったのですが、メッシュ(Infill)出力時にSlic3rの標準設定の速度(80m/ms)で印刷するとフィラメントを押し出すExtruderのスピードが間に合わず出力されるプラスチックが少なくなってしまっていたみたいです。

Slic3rのバージョン1.3.0ではプラスチックの出力が長さでなく、体積で制御される様に改善されたみたいでそれが今回の出力不良に関係しているみたいです。

Slic3rが書きだすG-Codeの始めの部分にある、糸状に出力されるプラスチックの太さが記されている部分を確認すると、バージョン1.3.0の出力だと毎秒あたりに出力されるプラスチックの体積も文末の括弧に囲まれて記載されています。

G-Codeの例
    <一部省略>
;
; external perimeters extrusion width = 0.44mm (2.37mm^3/s)
; perimeters extrusion width = 0.56mm (6.18mm^3/s)
; infill extrusion width = 0.50mm (7.28mm^3/s)
; solid infill extrusion width = 0.56mm (2.06mm^3/s)
; top infill extrusion width = 0.56mm (1.54mm^3/s)

    <以下省略>

試行錯誤の結果、手持ちの3Dプリンターの現在の設定だと5mm3/sのプラスチックの出力が限界(注1)だという事が分かり、Slic3rバージョン1.3.0の設定の:


Print Setting >> Speed  >> Autospeed (Advanced) >> Max volumetric speed

で、秒あたりの出力体積の上限 (この場合は5mm3/s) を設定してあげればSlic3rが印刷のスピードを調整してくれるそうです👇。

G-Codeの例 (Max volumetric speed = 5mm3/s)
    <一部省略>
;
; external perimeters extrusion width = 0.44mm (2.17mm^3/s)
; perimeters extrusion width = 0.56mm (5.00mm^3/s)
; infill extrusion width = 0.50mm (5.00mm^3/s)
; solid infill extrusion width = 0.56mm (2.06mm^3/s)
; top infill extrusion width = 0.56mm (1.54mm^3/s)

    <以下省略>

この設定である程度安定して印刷が出来る様になりました。




注1: 直径1.75mmのフェラメントを使っているのでフェラメントの断面積は πr2 = (3.14)x(1.75/2)2 = 2.40mm2で、5mm3/sの出力スピードだと、フィラメントの出力の限界が毎秒2.08mmという事になるのですが、現時点でExtruderのドライバーの電流のリミッターがかなり抑えた設定になっているからだと思われます。



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